本の紹介

【本のレビュー】「発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす生きづらいがラクになるゆるメンタル練習帳―そこそこ幸福に生きる40のコツ」

「生きづらい毎日を送っている」

「色んな方法を試して頑張ってきたけど、ラクにならず疲れてしまった…」

「変わりたいけど変われないのは、自分がダメだから?」

「もっと上手に生きていきたい」

こんな悩みに心当たりはないでしょうか。

近年、注目されて認知度も上がった「生きづらさ」というワード。

特に私のようなHSPやアダルトチルドレンの方にとっては、より身近な問題かもしれません。

そんな悩み解決のヒントとして、今回は「発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす生きづらいがラクになるゆるメンタル練習帳―そこそこ幸福に生きる40のコツ」をご紹介します。

この本で学べること:

  1. 生きづらさの原因は自分の中にある
  2. 生きづらい考え方を切り替えるためのヒント
  3. 自分を変えなくていい。「擬態」を覚えて生きやすくなる方法
  4. 生きるのがラクになる”ちょっとした習慣”の具体例

生きづらさを抱える当事者、かつ精神科医という立ち場から書かれた、とても読みやすい一冊です。

「生きづらさを解消したい!」と思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

※本書はタイトルが長めなので、ここからは一部省略させていただきます。ご了承ください!

「生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳」の内容と要点まとめ

「生きづらいがラクになる ゆるメンタル練習帳」は生きづらさを軽減して”そこそこ幸福に生きるコツ”をまとめた本です。

発達障害、うつ病経験、セクシャルマイノリティなど、自身も多くの生きづらさを抱える「バク@精神科医」さんによって書かれています。

内容を要約すると…

■生きづらさの原因は?よくあるパターンと具体例

■生きづらい考え方を切り替えるためのヒント

■自分を変えるのではなく「擬態」を覚えて生きやすくなろう

■イライラ解消法や人間関係のコツなど、”生きるのがラクになる”習慣

いずれの項目も、実例や具体的なやり方が挙げられていて理解しやすかったです。

それでは各項目の要点を解説します。

生きづらさの原因は?よくある4つのパターンと具体例

精神科医である筆者が患者さんを診ていて分かった「生きづらさの原因」、多いのは下記のようなものでした。

・まだ起きていない悪いことを想像して、不安に駆られる

 例)「コロナにかかったらどうしよう」という不安から眠れなくなり、生活困難になるなど。

・他人の価値観や世間体を気にしすぎて、自分を見失う

・他人と自分を比べて嫉妬や劣等感を抱く

 例)

┗SNSで他人から「いいね」がもらえることを基準に、ランチのメニューを選ぶ。

┗向いていない仕事だが、周囲に期待されて入った会社なので辞められず体を壊す。

┗「周りの皆は離婚してない」という理由で、DV夫と別れられない女性。

┗人の幸せや成功を見ただけで落ち込んだり、嫉妬に苦しむ。

・なんらかの病気が関係している

例)定期的に死にたい気持ちになっていた女性。調べてみたらPMDD(月経前不快気分障害)のせいだった。

ここで上げた4つの例は、「病気が関係している」以外は自分の考え方を変えることで解決できるもの。

辛さの原因が病気でないのなら、「自分は自分、他人は他人」と割り切ることができれば悩みは消えるというのが結論です。

生きづらい考え方を切り替えるためのヒント

生きづらさから抜け出すヒントとして、この章ではこんなことに焦点を当てています。

・嫉妬を手放そう

・自己否定や考えたフリで「何かした気になる」のはNG

・失敗を恐れず挑戦できるようになろう

・「人は皆平等」ではない。自分のできることをコツコツと

詳しく解説していきます。

嫉妬を手放そう

生きづらさの一つ「嫉妬」は他人への勝手な格付け・競争意識から生まれる感情。

基本的には他人を嫉妬することに意味や実益はありません。潔く手放すか、せめて「負けないぞ!」と自分の原動力に繋がるように捻じ曲げてみてはどうでしょう。

また、周囲がどんなに幸せそうに見えても、その姿がすべてじゃないことを心に留めておきましょう。誰でも悩みがあり、ドロドロした問題を一つくらい抱えているもの。しかもそれは外からは知りえないことがほとんどです。

自己否定や考えたフリで「何かした気になる」のはNG

人は、自分をほめるより自己否定するほうが簡単です。しかも自己否定すると、それだけで「何かした気になる」ことがダメなポイント

マイナスなことを考えるくらいなら何も考えない、もしくは懸念点をカバーする具体的な対策まで考えなければNG。

例)「私は人前が苦手だから、明日のプレゼンはしどろもどろになり失敗するのでは…」

 →「せめて原稿を見ながら話せるよう、カンペの準備はしておこう」 等々。

また、挑戦や行動をしなかった時「考えたフリ」をしていることがあります。

例)

「いい感じの求人がないから、なかなか転職できない」

「毎日忙しいから資格の勉強をする気力が湧かない」 など

それらしい理由をつけて「きちんと考えた結果、諦めた」というフリをしていますが、行動しなければ経験値にならないばかりか、やらなかった後悔が湧いたり「自分は行動できないヤツなんだ」という自己否定に繋がります。

何も行動していないのに「自分はダメだ」と責め始めたら、それは生きづらさを自分で生み出していることになります。そうならないため、自分に言い訳して「ダメぬるま湯」に浸かっていないかセルフチェックする意識が必要です。

失敗を恐れず挑戦出来るようになろう

失敗を怖がっていると、人は何にも挑戦できません。挑戦や失敗なくしては「じゃあ次はこうしてみよう」とか、成功するためにどうすればいいかも知ることができないままです。

これではいつまでも望みを実現させることができず、幸せな人生にはつながりません。

「失敗したらどうしよう」と考えることより、「失敗から、原因や対策を考えて次に活かす」がベターです。

それでも失敗が怖いのは、失敗に慣れていないから。克服法として、あることをして「失敗に慣れる」方法があります。

それは…

電車でお年寄りに席を譲る

→成功しても、断られたりしても、大した問題になりません。ちょっと恥ずかしいかもしれませんが、それだけです。

こうした小さな行動で「失敗しても大丈夫」という気持ちを養うことができます。

「人は皆平等」ではない。自分にできることをコツコツやるべし。

生まれつき容姿がよく、家もお金持ち…というように、環境に恵まれたラッキーな生まれの人もいれば、アンラッキーな人もいます。残念ながら、人は生まれながらに平等ではありません。

だからといって自分の不遇を嘆いても、声高に叫んで不幸アピールしても、状況は何も変わりません。

自分に与えられた条件のなかで「今よりマシになる」努力をするのが建設的です

  • 皆がやっている方法を真似して上手くいかないなら、自分に合う方法を探す
  • 「努力するけど、できる限りラクしたい」という気持ちは一見怠惰だけれど、努力の効率UPに繋がるのでむしろOK!
  • 自分を全否定するのは思考停止している証拠。何が辛いのか、どこを変えたいのか、一つ一つきちんと向き合ってみる

このようなこと頭におきながら、現状を変えるために行動し、試行錯誤しましょう。

どんな小さなことでもいいので行動することが大切です。

自分を変えるのではなく「擬態」を覚えて生きやすくなろう

ここで言う「擬態」とは、卒なく生きられているかのように、世の中にうまく馴染むこと。

この章では「自分の根本的な性質を変えなくても、考え方・生き方を少し工夫=擬態すればOK」と説いています。

不器用だったりネガティブなままでもいいから、スムーズに生きられるように小さな工夫をしようということですね。

生きやすくなる擬態のコツを全部で21個紹介しています。

どれも具体性が高くて参考になるのですが、特に良かった2つがこちら。

「でも」「だって」「どうせ」の3Dを止めるだけで、問題の8割は解決する!

「でも、〇〇だから無理」

「だって、私のキャラじゃないし」

「どうせ失敗してしまう」

などなど…3Dは否定の言葉。

生きづらさを解消するには「現状を変える」か「現状の受け止め方を変える」しかありませんが、否定癖はそのどちらも阻害します。

3Dは変わるチャンスを潰してしまうのです。

逆に、3Dをやめると人からアドバイスをもらえる機会も増え、改善に取り組む(行動する)ことができます。

人生を前向きに変えたいなら、3Dは使わないように癖づけた方が圧倒的に良いです。

ときには「逃げる」「諦める」が「やるべきこと」になる

間違った努力を続けると心がすり減り、何も得られません。

明後日の方向に向いている努力であれば、すぐ方向転換をするべき。

頑張り続ければなんでも報われ、幸せに繋がるわけではない。よく考えて臨むべき。これも動かぬ現実の一つです。

イライラ解消法や人間関係のコツなど”生きるのがラクになる”習慣

ここでは、生きるのがさらにラクになる心の習慣として19個のコツが紹介されています。

なかでも重要だと感じたのはこちら。

人生において一番大切なのは、自分自身と知る

ここでは「障害を持つきょうだいのために生きねば」と自分に強いていた患者さんの話を例に、自分のために生きることの大切さが語られています。

人のためでなく、自分のために生きることを自分に許可することが大切。

人生で一番大切な自分のために、時には休憩することを自分に許してください。という内容でした。

「ゆるメンタル練習帳」はこんな人におすすめ

  • 生きづらさの根本的な原因を知りたい人
  • 生きやすくなる方法を具体的に知りたい人
  • 当事者目線からの考えに触れたい人

こんな方には参考になる本です。ぜひ読んでみてください!

「ゆるメンタル練習帳」はこんな人にはおすすめではない

  • 自分の考え・行動を変えたくない人

→考え方や行動の変革なしに、生きづらさは変わらないというのが基本の内容です。

  • ゆる〜く手軽な解決策を期待している人

→「ゆるメンタル」というタイトルから簡単で楽そうなイメージを持つ方もいるかと思いますが、多少厳しいことも書いてあります。突きつけられる現実を受け止めきれない人には合わないでしょう。

「ゆるメンタル練習帳」を読んでみた感想|とにかく現実的で実践的、そして優しい

現実を受け入れろ。話はそれからだ

読んでみて心に響いたのは、圧倒的に突きつけられる現実。

「人は生まれながらに平等ではない」など、ちょっと辛いこともハッキリ書いてあります。

なぜかと言えば、現実を受け入れないことには変えることもできない、と筆者が実感しているからです。

人にはそれぞれ得手不得手もあり、持てる能力にも差があります。それを受け入れず、がむしゃらに取り組んでも結果は出ませんし、効率は最悪。徒労感が募るだけ。

そういったことに当事者としてたくさん悩んできたからこそ、耳障りのいい言葉で誤魔化さずに、しっかり現実を書いているのだと思います。

本気で変わりたい人を応援するための、強い覚悟を感じました。

急には変えられないことも理解した上での実践的アドバイスに感謝

考え方や行動を変えることが本書のメインテーマですが、生まれてから今まで親しんできたそれらを変えるのはとても骨の折れること。

実践法を淡々と紹介するだけでなく、「やらなきゃとは思うけど、すぐに変えるのは難しい…」という読者の気持ちもちゃんとカバーしてくれる内容です。

「やることはハードルが高くて大変ですよね。でも具体的にやり方を言うので、なんとか一緒に乗り越えませんか?」

と手を差し伸べてくれるような、温かさを感じます。

まとめ|分かりやすく実践的で、「やってみよう」と思える一冊

「ゆるメンタル練習帳」は、生きづらさ改善法について、乗り越えてきた当事者の目線から具体的ですぐ実践できる方法がたくさん書かれています

ときに厳しく、ときに優しく、ちょうどいい距離感で教えてくれる良いトレーナーさんのような本でした。

ぜひ「発達障害、うつサバイバーのバク@精神科医が明かす生きづらいがラクになるゆるメンタル練習帳―そこそこ幸福に生きる40のコツ」を読んで、生きづらさの改善に挑戦してみてください!